オホーツク・オーチャード株式会社

篠根克典【オホーツク・オーチャード株式会社】

ギターを奏でるりんご園のおじさん(本人談)

■1 オホーツク地域のどこで、どのような事業を行っていますか。

北見市でりんごの果樹園を運営しています。一般消費者への直接販売が殆どで卸売は3%程度です。園内直売所での販売を中心に、木単位のオーナー制、ネット販売で生計を立てています。

また、シードルやコンフィチュール、キャンディといった農産加工品も手掛けています。
50年ほど前はオホーツク管内にもりんご農家が100軒ほどありましたが、今は北見市の2軒だけです。

産地消滅へのカウントダウンは進んでいます。このまま行けば、私の代でオホーツクのりんご栽培は終わり、オホーツクの人々が秋にりんご狩りを楽しむことが出来なくなるんです。

栽培しているりんごの品種数は30以上、その中でも旭という希少品種には、数は少ないが全国各地に熱烈なファンがいます。北海道には身近なりんごだったのですが、酸っぱい・日持ちがしない・柔らかい、と散々な評価を受けて市場から消えていきました。

最近主流のりんごとは正反対で、甘酸っぱいくて皮が薄く繊細な、どこか懐かしい感じがする品種です。旭に関しては日本国内の大部分を私たちが生産していますが、もし果樹園を閉めることになればファンの皆さんを悲しませることになります。細々と火をともし続けてきた一つの文化が消えてしまうことになるのです。責任が重いですが、必死で頑張るしかありません。

 

■2 これまで事業をやってきて一番大変だったことはなんですか。

私は大学を卒業後、半導体関連の技術者を20年間務めて、2010年に実家に戻って脱サラ就農しました。父はずーっと農業に携わて来たため他の世界を知らない人です。生きてきた世界も時代も違うので、当然のように対立しました。

私は、りんごの品種も増やし加工品のラインナップも作り消費者を飽きさせない工夫が必要だと考えたのですが、全く理解してもらえませんでした。父の時代は良い物を作れば黙っていても売れた時代、むしろ作るほうが難しかったのです。

しかし今は、情報が容易に手に入るので良い物を作ることは比較的簡単になりましたが、物が十分に行き渡ってしまったために売ることが難しくなってしまった時代です。たった数十年でここまで世の中が大きく変わったので、変化に追随できないのは仕方のない事だと思います。

10年もかかりましたが、私の考えに基づいて事業を構築できるスタートラインに、やっと立つことが出来ました。

 

■3 どのような人材と一緒に働きたいと考えていますか。

りんごは時間のかかる植物です。苗木を植えてから収益が出せる量の実をつけるまでに10年以上かかります。しかも手間がかかる割りに収入が少ない。私も既に50歳を過ぎています。

若い世代に引き継ぐことを考え始めないといけないのですが、仕事がきついのに儲けが少ないのでは、引き渡すことが出来ません。ビジネスモデルを一から考え直したほうが良いかも知れません。

こんな状況を分かってでも、りんご栽培に挑戦してみたい、というチャレンジ精神のある若い人と仕事をしたいですね。ちょっと虫の良い願望ですね(笑

 

■4 オホーツク地方での事業で現状困っていることはありますか、またそれはどのような事ですか。

オホーツクの不利な点は、札幌や関東圏などの大消費地から遠いということです。宅配便は料金が上昇傾向にあり、遠方への配送はだんだん難しくなるかも知れません。

また、オホーツクは今後高齢化が進み人口も減少していくと予想されています。今は園内直売所への訪問客が主な収入源ですが、高齢化すれば北見市郊外にある直売所に来てくれるお客様は確実に減ります。ご高齢のお客様のお宅にお届けに行ければ買って頂けるのでしょうが、それを実施するための人的余裕も経済的余裕もありません。

 

■5 今後のビジョンを教えてください。

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・北見市昭和の地にりんごのワンダーランドを作ろう!
・果樹園の中に小さいカフェを作ってお客さんにゆっくり過ごしてもらおう
・ログハウスを作って、小さなコンサートを開こう
・老若男女、多くの人が楽しめて癒される果樹のワンダーランドを作りたい
・ オホーツクの未来にりんご栽培を引き継ごう!
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ビジョンというより夢に近いですね。

2009年に父親から「もう高齢だし、りんごの木を少しずつ減らしていく」と聞きました。篠根果樹園が無くなれば、オホーツクのりんご栽培は終わったに等しい状態ということも聞きました。

毎年毎年りんごを楽しみに待っているお客さんはどうなるんだろう?一度消えてしまえば、復活させるのは簡単なことではありません。勤務していた半導体業界が先行き不透明だったこともあります。諸々考えた末に、私は帰郷してふるさとの役に立つ人生を選びました。

しかしその後は、収益が厳しい果樹園経営の現実、それに加えて父との対立、父が残した収量低下問題、起こること全てが「お前にやっていることは無駄な努力だ」と言われているように思えてきます。いいえ、こんな状態だからそ、夢を語りましょう。半導体業界で酷い逆境は経験済みですので、簡単には負けません。

良質なりんごは冷涼な気候でなければ出来ません。気候の温暖化が進めば青森県や長野県といった現在のりんごの主産地はだんだん厳しくなって行きます。日本の中で北海道が主要な果樹産地になる時代が来るでしょう。そうなったら…..私は北海道りんご界の中興の祖と言われる…….だと良いな、と思いながら毎日頑張っております。

 

社 名 オホーツク・オーチャード株式会社
住所 〒090002 北見市昭和213番地3
事業内容
  • 果樹作農業を主とした農業
  • 農産物及びその加工品の販売事業
  • 酒類の販売業
  • 食品、食品加工の企画、開発、製造、販売に関する事業
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